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zoom RSS 「文鳥」(夏目漱石)漱石の淡彩画的な私小説

<<   作成日時 : 2018/07/03 22:25   >>

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夏目漱石の短編で、名短編といえるものは何だろうか、候補は少なくないがユニ
ークさでいうなら「夢十話」だろう、人間の薄気味悪い深層心理を描いてある意味
、身の毛がよだつ気がしないでもない、それほど価値はある。逆に淡彩画風という
べきか、純然たる私小説にしか見えない「文鳥」だが、・・・・・1908年、明治41年6月
13日から21日まで「大阪朝日新聞」にだけ短期連載された.

 「文鳥」は実際の生活そのまま、下女などの横柄で権柄ずくな漱石のイヤな性格
もやや露骨でやっぱりという感じ。鈴木三重吉の斡旋で漱石が文鳥を飼う、だが
その文鳥も儚く死んでしまうというお話である。時々、昔の(漱石にとっての)女の面
影が浮かび上がる、だがさほどでもない。

 文鳥を飼うことを勧めた三重吉だが、なかなか籠も文鳥も持ってこない、やっと
冬になって飼い始めた漱石であった。

 だがある日、文鳥が死んでいた。

  帰ったのは午後三時頃である。玄関に外套を懸けて廊下伝いに書斎に這入る
積りで例の縁側に出て見ると、鳥籠が箱の上に出してあった。けれども文鳥は籠
の底に反っ繰り返っていた。二本の足を硬く揃えて、胴と直線に伸ばしていた。自分
は籠の傍に立って、じっと文鳥を見守った。黒い目を眠っている。瞼の色は薄蒼く変
わっていた。

  漱石は「自分」であるが。午後三時頃自宅に帰って、文鳥が死んでいるのを見つ
けた。ここで作家である漱石の「自分」が外出して何をやっていたか、である。

 「自分」はその前日、「三重吉に逢ってみると例の件が色々長くなって、一所に午飯
を食う、一所に晩飯を食う。その上、明日の会合まで約束して宅に帰った。帰ったの
は夜九時頃である。文鳥のことはすかkり忘れていた。疲れたから、すぐ床に這入っ
て寝てしまった」

 その、結局の所、「例の件」で取り込んでいる様子なのである。鈴木三重吉と長い
時間、話し込んで翌日また会う約束をしていた。その結果が午後かえって文鳥が
死んでいることに気づくのである。

    翌日、目が覚めるや否や、すぐ例の件を思い出した。いくら当人が承知だって
、そんな所に嫁に遣るのは行末よくあるまい、まだ子供だから何処へでも行けと云わ
れる所へ行く気になるだろう。一旦行けば無暗に出られるもんじゃない。世の中に
満足しながら不幸に陥って行く者が沢山ある。などと考えて楊枝を使って、朝飯を済
まして又例の件を片付けに出掛けに行った。

 で、これから後には「例の件」は一度も出てこない、「行人」、「手紙」に出てくる縁談
の相手を世話する、という事象に関連している。

  この前段でも「三重吉から例の件で某所まで来てくれと云う手紙を受け取った」
という一文があるのみで、まあ、「手紙」につらなる縁談の世話の件であろうと推測
できるが。でも誰かの娘の縁談でその娘が不幸になりそうなので反対しているよう
な気配は分かる。

 ともあれ、「例の件」で文鳥のことは忘れてしまった、の結果である。

 「文鳥」で浮かび上がるものは何だろうか、意外に錯綜している気配であるが、飼
い主の雑用に左右される可憐な文鳥の儚い運命、とでもいうべきだろうか。

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