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zoom RSS 究極の稀覯本「楚囚之詩」北村透谷の初版本だそうだが

<<   作成日時 : 2018/05/25 19:20   >>

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説明によると、明治の文豪のひとり北村透谷がまだ有名になる前、本名の北村門太郎の名前で自費出版した「楚囚之詩」です。
 刊行後まもなく著者により回収廃棄されたということですが、店頭に並んでいたわずかの期間に売れたものがあったらしく、透谷の名声が上ってからは、もしあったら幻の本といわれていたものです。のち、昭和の初め、ある古書即売展で大学生が雑本の山から初めて見つけ出し、話題騒然となったそうです。

そののち昭和三十年ころには五百円という値がつき、同三十一年までには四冊が発見されたといわれる。
すべて断裁処分されたと伝えられる「楚囚之詩」であるが、実際は透谷が思い直して刊行したものらしく、のちに透谷と「人生相渉論」で激論をかわした山路愛山が、後年国民新聞紙上で<明治二十二年、


 別段、その作品自体の価値とは無関係に、物珍しいからというだけである。自由民権
運動で官憲に勾留されての鬱屈の情を詩に託したものである。この『楚囚之詩』は透谷
の思想のもっとも激動の時代の産物であり、それは騒然たる時代の反映でもあった。詩
人してはまだまだの段階での、いたって未熟なものと言える。

 といって『楚囚之詩』自体がまるで下らないわけでもなさそう。その不安定で激動の揺
れ動く思想の振幅が、意外なおもしろさを秘めているわけでもある。別に成熟したレベル
の作品だけが価値を持つわけでもない。

 当時の批評家の『楚囚之詩』への評価も、初戦は作家に完成度を求めるのが常であ
る以上は手厳しいものにならざるを得ない。だが作家の新たな道の開拓は未成熟と冒
険精神の産物である。だから独自の価値を見いだせるものである。

 北村透谷の初版本は物珍しいという意味での稀覯本として見られがちだ。が、それだ
けが価値ではない。

 だが当時の批評では

 「 楚囚之詩、北村門太郎著、蓋し新体詩なり。十六章を通読するに、気骨、想像、
愛思、三つ共に凡ならず見ゆれども、律詩として評する時は不幸にも敬服する能は
ず、若し之を歌はんには如何なる調にて歌はんか、吾人は云ふ此れ詩情ある散文
なりと。・・・・・・・」(「女学雑誌」第160号、1889年5月4日)

 「女学雑誌」はその後、北村透谷と縁の深い雑誌となった。「気骨、想像、愛思」は
言い換えれば政治的情熱、想像は想像でイマジネーションのこと、愛思は恋愛的と
なるだろうか。評者は透谷のこの表現への入れ込み具合は非凡と見ている、だが
「律詩」と見れば不満が出るらしい。調べが伴わないというのである。要は「詩情ある
散文」であるとの評価だ。

 だが透谷はそうは思っていなかったようだ。「律詩」についてもそれなりの自負心は
あったようだ。自分で書いた『楚囚之詩』の広告宣伝文では

 「此著は結構、関節、用韻の方等総て新基軸を出」したと述べている。「韻」は「律」
を生むものである。

 その広告文

 「北村門太郎著  楚囚之詩(定価郵税共八銭)

 此著は近来の新体詩中に一新現象を書出せる者なり。

 此著は結構、関節、用韻の方等総て新基軸を出せる者なり。

 此著は国事の犯罪人が獄中にありての感情と境遇を穿てる者なり。」

 これは「国民之友」第50号(1889年5月11日)の裏表紙に掲載された、広告文は
透谷自身によると認められている。書評家の求める「成熟」と透谷の「未成熟」の
可能性にかける精神とが大きく乖離していた。

 だが広告に見られる自信と、好評への躊躇はその序文にも顕著である。あげく


 「急ぎ書肆に走りて中止することを頼み、直ちに印刷せしものを切りほぐしたり」

 この「切りほぐし」が結果として「楚囚之詩」を稀代の稀覯本としたのである。

 自信と不安、悔恨、その揺れ動きがいかにもロマン詩人らしいと言えるが。

 当時の透谷の住居は銀座の数寄屋橋あたり、出版元の春祥堂は、今もあるらし
い銀座の近藤書店の前身らしいから急げば徒歩数分以内だった、

  そういう事情で「印刷せしものを切りほぐす」ことが行われてしまった。で、再考
の余地もない。ただ透谷自身、「自分の参考にも成れと一冊を左に綴込み置く」と
日記にそれを綴じ込んだ。本来なら『楚囚之詩』はその一冊のみ残存となるが、実
書評用にと批評家に送られたものが何冊かあったらしい。その数冊を加えても、表
紙もついた『楚囚之詩』はほんの数冊にとどまる。稀覯本中の稀覯本なわけだが、
その後全集には収められたが。博文館、明治35年の『透谷全集』。
 

 

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