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zoom RSS 江戸川乱歩に推理小説作家として生きることを決意させた小酒井不木

<<   作成日時 : 2017/09/19 06:46   >>

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 いうまでもなく江戸川乱歩は偉大なる日本の推理小説作家である。その最高傑作
は何かと考えたら私は文句なしに「人間椅子」であると思う。博文館に戦前勤務して
いた横溝正史は「パノラマ島奇談」だともいうが、これはあまりにごちゃごちゃしすぎ
て、頂けない。次は「押し絵と旅する男」だろうか。見事だと思う。

 さて、江戸川乱歩は何も最初から推理小説、探偵小説作家で生きていこうと思って
いたわけではない。

 それまで日本の文学にはほとんど存在していなかった近代日本の推理探偵小説
、ミステリー小説の始まりといえば春陽堂から1925年刊行された江戸川乱歩による
第一作品集『心理試験』であり、収録作品は「二銭銅貨」、「D坂の殺人事件」、「心理
試験」,「赤い部屋』と初期の名作が並んでいる。

 まず極めて決定的で重要な事実は、推理小説作家、ミステリー小説作家としての
江戸川乱歩のデビューに小酒井不木が決定的な役割を果たした、ということである。

 乱歩の第一作品集『心理試験』に小酒井不木は次のような序文を贈っている

 「エドガア・アラン・ポオが探偵小説の鼻祖であるとおり、わが江戸川乱歩は日本
近代探偵小説の鼻祖であり、従ってこの創作集は日本探偵小説界の一時期を劃
する尊いモニュメントということが出来るであろう」

 不木はそれ以前に「新青年」に乱歩が「二銭銅貨」を発表するための後押しをして
おり、まさに乱歩が推理作家、ミステリー作家としてデビューするための最大の恩人
であったわけである。

 その小酒井不木と江戸川乱歩の往復書簡集「子不語の夢」が出版されている。
二人の七年間に及ぶ往復書簡集である。この本は松尾芭蕉生誕360周年記念で
三重県が行った「伊賀の蔵開き」という事業企画の一環であった。発行は「乱歩蔵
びらき委員会」である。

   
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 江戸川乱歩は「準名古屋人」でこう述べている

 「私が探偵小説を書き始めたのは大正末期、満27歳頃であったが、小説の方で
も名古屋と大いに縁があった。私の処女作を推賞して下さった小酒井不木博士が
御器町に住んでおられて、私が大阪、または東京からその博士邸を屡々訪問した
からである。その頃名古屋には小酒井さんを中心として探偵小説家の集まりがあ
り、故国枝史郎氏などもその仲間であった。私はこの会合によく参加した」

 その乱歩と小酒井都の書簡のやり取りは、乱歩がデビューした一年ほどしてか
ら始まった。1924年(大正13年)、乱歩はその自信作「心理試験」を小酒井に送り、
「私が果たして探偵小説家として一人前になれるかどうか、を先生に御判断願い
たいのです」

 小酒井はその作品を読み「あなたは探偵作家として十分立っていくことが出来
ると確信して居ます」と応えて、太鼓判的な感触を与えた。実は、このときにこそ、
日本で最初の専業の推理小説作家、見してリー小説作家が誕生したといえる。

 小酒井不木は1890年(明治23年)、名古屋にほど近い蟹江という地に生まれた
。大地主の息子だった不木は愛知一中、旧制三高、東京帝国大医学部、さらに
大学院に進んで生理学、血清学を研究した。卒業後は東北大学助教授に任命さ
れて衛生学研究のため欧米に留学、その地でドイルやポオの作品に接し、遂に
推理、ミステリー小説、文学のパイオニアともいうべき紹介者となった。

 蟹江の歴史民俗資料館には不木の展示室があり、医学者としての業績、俳人
としての、探偵推理作家としての活躍などが、その生涯と業績の全体がコンパク
トにまとめられ展示されている。原稿、書簡、遺品なども展示され、デスマスクも
その一角に展示されている。享年39歳というにしてもその素養と業績の大きさを
十分に伝えているといえる。



 探偵推理小説が日本に根づいていなかった時代、その新進の天才作家と、こ
の分野の先駆的な達人、乱歩と不木の関係、交際は七年間で大きな差異をしめ
すようになる。芸術家肌の乱歩と通俗大衆化をよしとする不木ではある意味、水
と油でもあった。その乱歩の怒りは断筆にまで及んで、それをなだめるため不木
はさまざまな手立てを講じている。探偵推理小説観の違いの衝突も書簡集のみ
どころである。


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